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2008/07/26

予測変換

 携帯電話の文字入力について研究している博士がいた。
 博士は主に予測変換・入力について研究開発をしていて、既に「スラムダンク予測変換」の開発に成功していた。「スラムダンク予想変換」では、例えば「安西先生」と入力すると、次入力候補に「バスケがしたいです。」と表示されるスグレモノで、これにより博士は予測変換におけるその地位を確固たるものにしていた。
 そしてこの度博士は、究極の予測変換・入力の開発に成功した。それは「テレパシー予測変換」と名づけられ、その内容は文字入力時の指先から使用者の脳波の状態を読み取り、それを分析することにより次の入力候補を表示するというものである。つまり、使用者の頭の中がそのまま入力されるという究極の予測変換である。
 これにより更なる地位と名誉が約束されたも同然の博士に、助手が嬉々として話かけた。
 「やりましたね博士。この究極の予測変換は世界中全ての携帯電話に搭載されるに違いありません。そうなれば莫大な収入になりますよ!」
 博士は流石に助手のこうした反応をも予測していたようで、落ち着き払って答えた。
 「いや。私にあるのはただ人々のコミュニケーションを円滑にしたいという思いだけだよ。人が本当に力を発揮できるのは、人と人が結びついたときだからね。私のつまらない発明がその一助となれば私にはそれで十分だよ。」
 博士は携帯文字入力学会に発明の概要を知らせるべく、早速「テレパシー予測変換」を利用して電子メールの作成に取り掛かった。博士が「前略」と打つだけで、「テレパシー予測変換」が次々と文章を提示し、博士はそれを選択するだけでよかった。
 前略
 私はこの度新しい予測変換・入力システムを開発いたしました。
 私はこのシステムを「テレパシー変換」と名づけます。本システムでは文字入力をする人物(以下、入力者)の指先から脳波の状態を測定し、それにより入力者の脳内にある文言を予測変換候補として表示するものです。
 実験段階でその精度は約99%と非常に高く、ほぼ正確に入力者の頭の中を描き出すことが出来ます。委細は次回の学会にて発表いたしますが、先立ってその概要のみをお知らせした次第です。
 このシステムが開発されたことによる最大のメリットは、私に莫大な収入が……

 博士このシステムの発表を見送ることにした。