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2010/08/08

つぶやく哲学書『自省録』

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 「作家が書いたラブレターは公開して良い」というルールは誰が決めたのか知りませんが、往々にして有名人の文章は公私を問わず、公の場に晒されがちです。
 さらにブログやmixi、Twitterなどが発達し、誰しもが文章をWEBの大海に放り込み続けている現代では、晒されるリスクはより高くなっています。
 そんな中、ブログもTwitterも今ほどブームではなかった1,800年前に書いた自分宛の「つぶやき」が、晒され続けている人がいます。
 それが、マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝です。彼の書いた自分宛の「つぶやき」が『自省録』として出版されています。
 ごく簡単に人物と『自省録』についてご説明すると、マルクス・アウレリウスは西暦121年4月26日生まれのおうし座。職業はローマの皇帝で、趣味は哲学です。そして『自省録』は彼が皇帝をやるかたわらで、折々書き付けていた「つぶやき」をまとめたものです。
 
 そしてこの『自省録』を、主に二つの理由から僕は繰り返し読んでいます。
 一つ目の理由。短い。
もっともよい復讐の方法は自分まで同じような行為をしないことだ。
君の肉体がこの人生にへこたれないのに、魂のほうが先にへこたれるとは恥ずかしいことだ。
遠からず君はあらゆるものを忘れ、遠からずあらゆるものは君を忘れてしまうだろう。
 マルクス君も皇帝業で忙しいため、だらだらと文章を書くことはあまりありません。より長いものもありますが、長くても半ページほどなので、ちょっとした合間にすぐ読むことができます。
 二つ目の理由。深入りしない。
或ることをなしたために不正である場合のみならず、或ることをなさないために不正である場合も少なくない。
 基本的に自分あてのメッセージであるため、くどくどした論証をすることはありません。「不正とは何か?」について説明するのは、皇帝ではなくハーバードの教授の仕事です。

 ちょっと人生がささくれ立っているときに応急処置で読むと、心安らぎますので、人生荒れ気味のかたは是非。