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2008/04/08

順番待ち

 なんて言ったって長男坊だったからね。生まれてきたのが一番先だったし、なんでも一番に買ってもらってたよ。そりゃあウチは金持ちじゃなかったからたいした物じゃなかったけれど、弟に比べりゃ数段ましさ。弟は服もおもちゃも何でもかんでも俺のお下がりで、ランドセルも自転車もいつも俺の後だったからね。
 なんでも俺が先に与えられる。そんな風に育ったから俺は順番待ちってのが全くできなくなっちまったんだな。三つ子の魂百までとはよく言ったものだよ。小学校の給食は誰よりも先によそってもらってたし、学生の頃電車に乗るにも割り込むのが当然と思っていた。そんな風にしてると敵も多いんだけどね、でも俺は体がデカかったから大抵の揉め事で勝っちゃうんだよね。そうすると俺が先であることに文句をつけるやつはどんどん減っていくんだよね。やっぱ環境が良くなかったな。
 結局学校は途中でよして、気付いたら立派なヤクザ屋さんになってたよ。そうなるといよいよ俺に文句つけるやつはいなかったね。タクシーの順番待ちなんてするわけねぇし、どんな混雑したメシ屋だって行ったらすぐに席を用意させたし、結局俺がそこに行けば待たされることなんて絶対なかったね。
 だからこの死に様は、まぁ俺らしいかも知れねぇな。高速道路で渋滞に気付かずにそのままズドンだからね。車の順番待ちが出来ずにお陀仏ときたもんだ。そのことについては俺は後悔してないよ。
 俺が何より後悔するのは、地獄に入るまでこんなに順番を待たなけりゃいけないのを知らなかったことだね。天国の方はガラガラだよ。最後の最後で順番待ちとは参ったよ。それを知ってりゃあ生きてるうちに少しは良いこともしたもんだよ。