「お、おかえり。」
「パパ、あたしね、ちゃんとおかいものできたよ。おもちでしょ、お魚でしょ、牛乳でしょ……あとね、うんとね……。」
「よしよし。みぃちゃん、ありがとう。偉いねぇ。」
「うん。それでね。全部しんせんなの!」
「新鮮?」
「うん。あたしね、おかいものの途中でタロくんのお母さんにあったの。みたらね、タロくんのお母さんが、からだをこーんな曲げてね、奥の奥にある牛乳をとってたから、
こんにちは。何してるんですか?
ってきいたら、タロくんのお母さんが、
これはしんせんなものを取ってるのよ。奥にあるのがしんせんだからね。
って言ったの。だからあたし、それまで持ってたものをぜーんぶ戻して、いちから奥のものに取りなおしたの。だからね、いまのやつはぜんぶしんせんなんだよ。
“パパの教え”その17、人のふりみてわがふりなおせでしょ?」
「そうだね。確かにパパは“人の振り見て我が振り直せ”っていうね。
でもね。パパはそのタロちゃんのお母さんのは真似しないで欲しいな。」
「なんで? しんせんの方がパパもいいでしょ?」
「うん。確かにパパも新鮮な方がいいよ。
じゃあね、おうちの冷蔵庫のことを思い出してごらん。みぃちゃんがゆで卵を作ろうとしたとき、冷蔵庫に賞味期限が明日までのものが一つと、一週間後のものが一つありました。みぃちゃんはどちらを先に使う?」
「あしたのやつ。だってあさってになったらダメになっちゃうもの。」
「そうだろう。スーパーの冷蔵庫だってそれと同じだよ。
みんなが新しいものばかりとったら、古いものはみんなダメになってしまう。ダメになっちゃったものはどうなると思う?
わかるよね? おじさんたちが賞味期限を張り替えなくちゃいけないんだよ。張り替えるだけならいいけど、あんことお餅を分けたりだとか、もっと大変な作業をしなくちゃいけないものもあるんだよ。
そんなおじさんたちの苦労を減らすためにも、みんなが古いものから順番に食べていかなきゃいけないんだよ。」
「そっかぁ。そうなんだね。おうちと同じなんだね。」
「そうだよ。じゃあ、”パパの教え”に一個追加しよう。“スーパーの冷蔵庫も家の冷蔵庫と同じ”ってね。」
「うん。“スーパーの冷蔵庫も家の冷蔵庫と同じ”だね!」
ーーみぃちゃんが万引きで捕まったのは三日後のことだった。