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2010/03/23

電車の座席を有料にして欲しい

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 僕はもう疲れた。電車におけるイス取りゲームの輪廻に。空席を見つけた途端にヨッシー並みのスタートダッシュをするおばちゃんや、ちょうど二人の間に座っていた人が席を立った瞬間に体を滑り込ませるサラリーマンに疲れてしまった。
 自分の意思で解脱すべきであるのはわかっている。けれども僕の意志の力では、座ることの魅力に抗うことはできないということもまたわかっているのだ。
 これまで何度も解脱を試みた。色々な言葉で自分自身に語りかけてきた。
 「長い人生で小一時間くらい立っていられるだろう。」
 「本屋で立ち読みするときは何とも無いじゃないか。」
 「座っちゃ駄目だ。座っちゃ駄目だ。座っちゃ駄目だ。」
 これらが功を奏して、座席を欲せずに過ごせた時期もあった。それでもまた、眠気に飲み込まれそうなとき、退屈に押しつぶされそうなとき、僕は目をぎらつかせて空席を探し求めるのだ。
 それならいっそ、全ての座席を有料にして欲しい。
 あさましい僕は、あるものが無料だとその利益を最大限享受しようとしてしまう。ポケットティッシュは必ず貰うし、機内食は残さず食べるし、IKEAのホットドッグにはやたらとオニオンチップスを乗せる。
 もしそれらが有料なら、僕はティッシュは家から持っていくし、機内にはコンビニで買ったパンを持ち込むし、オニオンチップスなど一かけらも欲しくない。
 同様に、座席が有料であれば、家から折り畳みのイスを持って……ではなく、本当に必要なときだけ対価を払って座ることができる。周りもまた対価を払って座っているのであれば、「俺はこんなに疲れているのに……」などと憎悪の目で彼らを見ることもない。非常に穏やかな気持ちで電車に乗ることができる。
 これは、一般的に、体力はあるけど金はない若者と、その逆の年寄りという図式を考えても、非常に理にかなっているように思う。
 だから、みんなが幸せになるために、電車の座席を有料にして欲しい。そして、発案者である僕は、無料で座らせてくれ。