彼は神職に絶望していた。彼が幾千幾万その御名を唱えようと神はついぞ応えることなく、世の中は悪意と欺瞞に満ち溢れ、彼の無力感は深まるばかりであった。
娼婦が彼の手を引き薄汚い部屋に彼を連れ込んだときも、彼は抗う力を持たなかった。彼は部屋の入り口に立ち、娼婦の服がその体から滑り落ちるのを別世界のことのように眺めていた。
女が彼の頬に手を触れて初めて、彼は眼前の世界を己のこととして自覚した。途端、彼は自分の虚ろな心を埋めるかのように女を求め、その夜すがら体を貪り続けた。
翌朝から彼は満ち足りた気持ちで再び神職に就いた。
彼は、今まで神がその徴を与え給わなかったのは、己の信心が浅かったからに他ならないと知った。彼は娼婦がその名を呼ぶときの様に、神の名を唱え続けた。
信徒は少し減った。