目黒区美術館で開催中の「ベルナール・ビュフェ展『木を植えた男』の著者ジャン・ジオノとの出会い」へ行ってきました。
人の陰鬱な一面に触れたい人は、「今こそ」この展覧会に行くべきだと思います。
ベルナール・ビュフェ(1928~1999)はフランスの画家です。家庭環境と戦争の影響もあり陰鬱な雰囲気を持った作風を特徴としていましたが、30歳のときに伴侶アナベルと出会ってから、より明るい作品も生み出すようになったそうです。しかし、晩年はパーキンソン病を患い、絵筆を持てなくなると、自ら命を絶っています。
彼の作品と人生については下記の「なんでも鑑定団」がわかりやすいです。ちなみにこのときの油彩画には1500万円の値がついています。
僕がビュフェのことを知ったのは、ブリヂストン美術館で『アナベル夫人像』を観たのが最初です。作品を買う持ち合わせが無かったので、ポストカードを買いました。
��右は川村記念美術館所蔵のルノワール『クロード・ルノワールの肖像』)
アナベルを描いた作品ですので、ストールの赤色や背景にも明るさがあります。とかく爆発しがちな芸術家にあって、愛が感じられる作品だと思います。
しかしながら、目黒区美術館で開催中の展覧会は、アナベルと結婚する前の作品が大半であるため、ビュフェの暗さが遺憾なく発揮された作品群を鑑賞できます。
さて、ではこの展覧会に今こそ行くべきである理由は何でしょうか。ひとつは、ごく単純に会期の終了が迫っていることです。4月11日でこの展覧会は終了します。しかしこれはたいした理由ではありません。
より重要なもう一つの理由は、こちらです。
桜です。目黒区美術館に行くには、目黒川沿いを通っていきますが、その桜が今まさに満開を迎えています。
この満開の桜の下を通り抜け、花見客をかき分けたあとに観るビュフェの絵から感じられる陰鬱さは格別です。花見客は皆赤ら顔をしていますが、そのあとに観る『キリストの十字架からの降下』と『赤い鳥』の赤は心に突き刺さります。
ビュフェの作品を観たあとに愛でる桜はきっとまた違って見えることでしょう。桜が散る前に是非、足を運んでみてください。