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2008/05/12

母のみそ汁がまずい

 ゴールデンウィーク、久々に実家に帰って感じたのは、何といっても母の料理スキルだ。こっちが青色吐息で一人前の料理を作っているというのに、母は桃色吐息を歌いながら家族全員分の料理を作る。しかもおかずの数も量も質も自分のそれとは比較にならない。多いし、旨い。さらには大量の食器も全て洗う。食事以外にも家の家事を一手に引き受けて尚このクオリティには驚くばかりだ。
 「男は皆マザコン」と誰かが言っているように、僕は母の手料理が大好きだ。カレーもハンバーグもカントリーマァムも。
 だが、母のみそ汁はまずい。というか、まぁ旨くは無い。もちろん母に面と向かってこんなことを言っては、味噌をみそ汁で洗うような抗争が家庭内で勃発するため、このことは秘密だ。しかしながら、僕の正直な感想はこうだ。

 俺のみそ汁≧インスタントのみそ汁>母のみそ汁

 これはなぜか。母のみそ汁も僕のみそ汁も味付けはほぼ同じ。市販のだし入りの味噌を水で溶くだけである。と言うか味付けてすらいないな。それにも関わらず母のみそ汁が僕のみそ汁に劣る理由はただ一つ。
 母がみそ汁を沸騰させるからである。
 幼い頃から「みそ汁を沸騰させてはいけない」という慣わしが存在するのはなんとなく知っていた。そして昔は母の作るみそ汁も沸騰してはいなかった。だが、ある日ウチのみそ汁を見ると、ボッコボコ沸騰していた。どれだけのヤンキーに囲まれたってこれほどにはならんだろうというほどボッコボコだった。その日以来うちの味噌汁は常にボコボコだった。
 母は手を抜いたのか?
 いや違う。この頃から母はパートに出るようになっていた。家事の上に外での仕事まで背中に背負った母に、火の面倒まで見るよう誰が言えるだろうか。沸騰して風味が飛んだみそ汁には、母の苦労が染みている。
 僕はまずいみそ汁をすすりながら、母に感謝の言葉をかけるが、みそ汁をすすっているため、母は気付かない。